紫苑君誕生日絵 


 紫苑の誕生日じゃん!と3日前に気がついて、急いで描きました。
なんか、気に入らなくて、結構やり直しました。「やり直してこれかい!!」と夏姫の声が聞こえてくるようです…。
まあ、とりあえず、紫苑くん誕生日おめでとう!!
そして、夏姫に頼み込んで、ミニ小説もかいてもらいました☆
2009-9/30までフリーです



祝福の夜


窓から差しこむ光で、紫苑は目を覚ました。
もう、ネズミは出かけてしまっている。
いつもと変わらない日常。
でも、紫苑は少し胸が高鳴っているのを感じた。

火藍は、カレンダーを見てため息をついた。
9月7日には、赤い○がついている。
紫苑の誕生日───。
でも、なにかを贈ることはできない。
火藍は、机の上のチェリーパイを見て、また大きなため息をついた。

ネズミは、涼しげな秋風に逆らいながら、ある場所を目指していた。
本当は行きたくないのだが、仕方がない。
ネズミは、力河のいる部屋に上がった。
「よぉ、よく来たな」
めずらしく力河の機嫌がいい。
「何のようだ?」
ネズミは、静かに問い返した。
「今日は、何の日か知ってるか?」
「さぁ?」
なにか特別なことでもあるのだろうか?
ネズミには思い当たることはない。
「なんだ、知らないのか?」
力河が、少し見下したように言う。
「今日は、紫苑の誕生日だ」
知らなかった。
確かに、昨日から紫苑は少し落ち着きがない感じがした。
「それで、なんで俺を呼んだわけ?」
ネズミは、一応聞いてみた。
「決まってるじゃないか。パーティをするんだよ」
ネズミは、頭が痛くなった。
力河に呼ばれたときから、嫌な予感はしていたが…。
「嫌だ」
ネズミは、自分の意思をキッパリと言った。
「何故だ?紫苑の誕生日なんだぞ?」
力河が信じられないという風に言う。
「誕生日なんて…下らない」
ネズミは自分の誕生日を知らない。
誕生日で浮かれる人の気持ちが、ネズミには解らない。
「とにかく俺は出ないから」
最後にもう一度、自分の意思を伝えるとネズミはビルをあとにした。

誕生日───。
その言葉をゆっくりと噛み締める。
夢のように甘く、そして夢のようにとろけて消える。
それから、紫苑にプレゼントをあげたらどんな顔をするかを想像した。
きっと驚くだろうな。それから、恥ずかしながらも嬉しそうに笑うんだろう。
なんで、俺はこんなことを考えているんだ?
それでも、足は勝手に進む。
それは、ケーキ屋だった。
その中に、ネズミはあるものを見つけた。
いつものように、紫苑の待つ場所に還る。
「あ、おかえり」
いつもどおりに、紫苑も迎えてくれる。
紫苑の目には、僅かな希望が宿っているように見えた。
「さて夕飯をつくるか」
いつもどおり、淡々と時間が過ぎる。
時間が過ぎるたび、紫苑の希望は薄れていった。
夕食を終え、紫苑がクラバットたちに本を読んでいると、ネズミの姿がいつの間にか消えていた。
そんな時、コンコンと遠慮がちに扉がノックされる。
紫苑は、戸惑いながらも扉を開けた。
「お届け物です」
帽子を深くかぶった青年が、四角い箱を差し出した。
紫苑はそれを受け取ると、サインを印す。
チッ。その時、舌打ちが聞こえた。
紫苑が、視線をめぐらすと青年が帽子を優雅な手つきで外した。
「ネズミ!」
紫苑が、目をいっぱいに開いて驚いている。
「やっぱり、天然なおぼっちゃまだな。
 勝手に扉を開けるなと言ったはずだろう。
 しかも、簡単に荷物を受け取るなんて。
 こんな簡単な変装にも気が付かないしな。」
ネズミは、帽子をクルクルとまわしながら不満をブツブツと言う。
「ねぇ、あけてもいい?」
そんなネズミに、おかまいなしに紫苑はキラキラとした目でネズミを見上げた。
「…どうぞ」
紫苑が、箱を開くとそこにはチャエリーパイが入っていた。
紫苑は、胸が詰まるのを感じた。
チェリーパイから、様々な思い出が頭を駆け巡る。
ネズミが、すこし戸惑ったような目で僕を見ていた。
泣いていた。
1筋の涙が、ゆっくりと頬をつたっていた。
自分でも、びっくりする。
慌てて、涙を拭うとネズミの灰色の目を見つめていった。
「ありがとう」
少し恥ずかしくて、はにかむように笑った。
「…こんな寒いとこにいないで、早く中に入るぞ」
「うん」
紫苑は、弾むように答えるとあることを考えた。
「そういえば、ネズミの誕生日はいつなの?」
「知らない。必要ない。」
あっさりと、答えが返ってくる。
「でも、それじゃあ僕がお返しができないじゃないか」
「別にいらない」
あ、そうだ!と紫苑は、手をぽんと打つとネズミの耳に囁いた。
ネズミと僕が出逢った日。
それだけを囁くと、満足そうにうなずいてケーキを切り分けに行った。
ネズミは、クスリと笑うと紫苑のほうへ行く。

それは、素敵な祝福の夜───。
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