第6話 作詞



「う〜ん、ここをこうして…あ、文字が足りない…」
「あのさぁ…しゃべってもいい?」
「いいよ〜。何?」
「さっきから、何やってんの?」
「……え。慧、僕が何やってるのか分かんないっていうの?!」
「分からなくも無いが…一応、確認のため」
「ふーん、そう……。…詞。詞をかいてるの」
「何の?」
「ドラマとのコラボ企画。四人とも詞をかいて、一人のが主題歌。二人が挿入歌。あとの一人は物語内で、でてくる歌。に採用されるんだって」
「ふーん。どんなドラマ?」
「えっとね、四人の少年と少女の青春ストーリー」
「だから、どんな青春なの!」
「ハァ……えっとね〜」
「今、ちょっと面倒くさいとか思ったろ?」
「思ってませんよー」
「狽、わっ!!凄い棒読み。悠ってそんなキャラだったか?…って、だからどんなストーリーなの?」
「んーとね、その四人が、中3なんだけど、高校に入る時にバラバラになっちゃって、心がすれ違っちゃうんだって。その心情を描いた、感動ストーリーだよ」
「そ。ガンバレー」
「結局そうなるじゃん。だから慧に、いちいち説明したくないんだよ」

「あ、そう」
「ほら、話すことないならアッチいって。集中できないでしょ」
「ひどい扱いだな」
 そして、また悠は指を折りながら文字を数え始めた。
 僕らしい歌をつくらないと…。お題にそって、尚且つ自分らしさをだす。あまり、意識せずにつくればいいのか…?

 ――数十分後。
「できた〜!!」
「おー、お疲れ〜」
「うん。頑張った!!」
「見せてみせて〜」
 そういうと慧は、僕と向かい合わせの席に座り、詞を読み始めた。
 人に、自分のかいた物を見られるのは、恥ずかしい。
「ふーん。いいんじゃない?」
「何、その感想。もっと他に無いわけ?」
「うん、初めてにしてはいいんじゃないのカナ?」
「何で疑問系なわけ?だから慧に見せたってダメなんだよ!」
「ひどい言われようだな。最近特に、俺に対しての扱いが邪険になってきたような気がするのだが…」
「そんなことはありません。それより明日、これ見せに事務所までいってくるから」
「はいはい」


 次の日、僕はさっそく事務所にむかった。
「こんにちは〜」
「悠君。久しぶり」
「あ、河野さん。どうも…」
「今日は、どうしたの?」
「あ、歌詞がかけたので…見せに…」
「おー、早いね」
「あ、はいコレ…」
 歌詞をかいた紙を渡すと、河野さんはそのまま読み始めた。
「うん。OK!泉莉ちゃんと、永都は質問してきたけど、悠君は大丈夫だったみたいね。それに、歌詞渡してきたの1番だよ」
「あ…そうですか…」
「うん。ほら、悠君はさぁ、もっと自分に自信もってもいいと思うよ」
「……はぁ。…そう、ですか」
「うん。悠君はさぁ、自分のことダメな人間だって思ってない?」
「イキナリですか…。そこまで思っては無いと思います」
「ん、そう…。せめて、俺と話すとき、敬語じゃなくていいよ。年だって10歳しか離れてないし。友達感覚でOK!!」
「え…でも、マネージャーさんですし…」
「いーのいーの。それにさぁ、なんか敬語使われると、なんか俺も年だな〜って感じちゃうからさ」
「あ、自分の為ですか」
「いやいや、そこまでハッキリ言わなくても…」
「そうですか」
「まぁ、とりあえず、俺に対して、気使わなくていいから。なんか質問とか悩みとかあったら、話してみな」
「ありがとうございます」
「ん。それじゃあ、また集まるときに連絡するから」
「はい。それじゃあ、これで失礼します」
「じゃあ。またね〜」

 僕は、帰りの電車に乗りながら一人考えていた。  何で今日の河野さんは、あんなにもフレンドリーだったのだろうか…?気に入られてる?…いや、そんなことは無いか…。

「ただいまー」
「あ、お帰り」
「うん」
「どうだった?」
「何か、帰ってくるといっつもそれ言ってない?」
「まぁ、気にするな」
「気にしないけどさぁ、やっぱ、バリエーション欲しいよ」
「そう。だから、それでどうだったの?」
「OKってさ。僕が一番にだしたみたい」
「ふーん。そっか。良かったね〜」
「うん、そうだね。新人なのに、一番最後に出すのはちょっとね…」
「まぁね」


それから数日後…。寮に一本の電話が掛かってきた。




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