1  突然の居候


未来も過去も流れる時間を『視る』ことのできる力。
瞬間視の眼をもつ者が、この世界のどこかに1人いるという。

僕は、昨日読んだ本の内容を思い出しながら絵を描いていた。
今年、中学生になった僕は迷わず美術部にはいった。
絵を描くのが、とても好きだったからだ。
僕は、運動が苦手なわけではないし、勉強もそこそこにできる。
普通で平凡。その言葉がピッタリな中学生…そんな感じかな?
時計を見ると、もう6時近くなっていた。
僕は、慌てて道具を片付けると部室(といっても美術室だが)をあとにした。
まだ、梅雨明けしていないのか灰色の雲がどんよりと空を覆っている。
僕は歩きながら、また本のことを考えていた。
もし…もし僕に瞬間視の眼があったら…と。
考えていると、胸がざわざわとした。
開けちゃいけない箱を開けるときみたいに。

僕は、チョコレート色のマンションにはいると暗証番号を押して中に入った。
エレベーターのランプが6を示すと、寄りかかっていた身体をおこしエレベーターを降りた。
僕が、605号室まで行くと部屋の前に誰かが座っていた。
僕が不審そうな目つきで見ていると、その人は僕がいることにようやく気づいて立ち上がった。
「水嶋 廉…君だよね?」
「そうですけど」
相手は僕と同じくらいの、かなり美形の少年だった。
そして、少年は綺麗な笑顔でこう言ったのだ。
「居候になります。三浦 一磨です。」
居候?いそうろう?イソウロウ?いそーろー?
「はァ???ちょっ…意味わかんないんだけど!」
僕は、グルグル混乱する頭で叫んだ。
「意味わかんないもなにも…俺がお前の家に一緒に住む、以上。」
頭の整理をしようと、考えていたら…
「暑い。はやく家に入りたい。」
そういって、手を出した。
「何?この手」
「鍵」
僕は、スクールバックから鍵を出すと手渡そうとした。
が、本当にこの人を信用してもいいんだろうか?と思い、鍵を握りなおした。
っていうか、さっきから態度がでかくなっている。
「早くしろよー」
本当に、暑くてバテてるようだ。
仕方ない。僕は、鍵を開けた。
三浦は、なんのためらいもなくズカズカと部屋に入り込んだ。
僕が慌てて後を追い部屋に入ると、三浦はエアコンをもうつけていた。
「おまえ、誰の家だと思ってるんだよ!」
僕は、ソファーに寝転び雑誌を読んでいる三浦にむかって叫んだ。
「誰の家って…俺の家だろ?居候なんだから」
「僕は、まだ許可してない!」
「許可もなにも…」
ピーンポーン。
三浦の話の途中で、宅配便が来た。
「コチラがお荷物になります。サインお願いします」
僕がサインしようとすると、後ろから三浦の手が伸びてきてサインをした。
「なに勝手にサインしてるんだよ!」
「これは、俺に届いた荷物だ」
宛先を示しながら言う。確かに、三浦 一磨様 と書かれている。
ドスンと荷物を床に置くと、中の物を出し始めた。
荷物には、筆記用具や服などが入っていた。
「本当に、ここに住むつもりなの?」
「最初から言ってただろ?居候だって」
僕は、本格的に頭が痛くなってくるのを感じた。
「よろしくな、廉」
そういって、また綺麗な笑顔で微笑むのだった…。





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