3 転校生


足取りは、次第に重くなった。 僕は、もしかしたら昨日のことは全て夢だったんじゃないかと思いこもうとした。
ガチャ!
僕は、予想はしていたが結構なダメージを受けた。
昨日、筆記用具などの後に送られてきたベッドの上には確かに三浦一磨が眠っていた。
僕は仕方なく、三浦を起こす作業に移った。
「おい!起きろよ、遅刻するぞ。今日から、うちの学校に通うんだろ?」
「…ん」
三浦は寝返りをうつと、また寝始めた。
僕は、洗面所に行くとティッシュを濡らして戻ってきた。
そして、三浦の顔にのせる。
1秒…3秒…5秒…。
5秒たったところで、三浦が勢いよく起きてティッシュを投げ捨てた。
それから、荒い呼吸くりかえして息を整えると、俺を睨んで叫んだ。
「俺を…俺を殺すきかッ!」
「だって、起きないと遅刻しちゃうでしょ?」
「それにしたって、起こし方は他にもあるだろ?」
「うーん…。思いつかなかったなぁ。」
「…お前、もしかして天然?」
「かもね。さ、朝ごはん食べちゃおうよ」
僕はキッチンに行くと、さて何を作ろうかと考えた。
「俺、朝は和食派だから。よろしく」
なんて、図々しいヤツだ。
「はいはい。…そういえば、君のことなんて呼べばいい?」
「好きにすれば」
「じゃ、居候でいいか…」
「ちょっと待て、なんで居候になるんだよ!ふつう名字か名前だろ?」
「そうなの?じゃあ…三浦って呼ぶよ」
「なんで、名字なんだ?」
「まだ、信用してないから」
僕は、あっさり答えると朝食作りにとりかかった。
「三浦、ご飯よそっといて」
「えぇー、メンドイ」
「あ、あとお茶もねー」
「廉、人の話聞いてる?」
「うん。みそ汁も出来たから。箸はとりあえず僕の使ってね」
「…はい」
「それで、三浦って給食?弁当?」
「選べるんだっけ?」
「うん、僕は弁当なんだ。給食、あんまり美味しくないから」
「じゃ、俺も弁当にすっかなー」
「よし、完成」
今日のメニューは…
   ・ご飯
   ・みそ汁(あさり)
   ・卵焼き(甘い)
   ・豆腐を豚肉で巻いて、照り焼き風味にしたもの
   ・ひじき
「ふーん、結構うまいじゃん」
「そうですか」
「お弁当って、今日もいるよな?」
「うん。今日はつくってあげるよ」
「マジ?サンキュー」
「明日からは作んないからね。あと、ご飯とか洗濯とか仕事分担するから」
「マジ?やめよーぜ、そんなの」
「働かざるもの食うべからずって言うでしょー」
「知らねーし」
「これ、水嶋家の家訓だから」
「嘘だろ?」
「うん、嘘。お皿、洗うから早く食べてね」
「はいはい」

がやがや…。
「おい、今日転校生が来るらしいぜ!」
クラスの情報係の香川が教室で騒いでいた。
僕は、ひそかにため息をついた。
クラスで孤立しなきゃいいけどね。
ま、僕には関係ないか…。
チャイムが鳴ると、みんないっせいに席につき期待のこもった目でドアが開くのを待っていた。
ガラッ!
ドアが開いた瞬間、みんなが息を呑むのがわかった。
「おはよう。ん、どうした?」
担任だと分かって、みんなの肩から力がぬける。
「あぁ、ナルホド転校生か。」
担任は納得したように笑うと、転校生を呼んだ。
三浦は優雅な足取りで、教室に入ると軽くおじぎをした。
「三浦 一磨です。よろしくお願いします」
そういって、得意の綺麗な笑顔で微笑む。
女子達の悲鳴に近い、ささやきが飛び交う。
「カッコよくない?」
「まぢ好みなんだけど!やばいッ///」
「あの笑顔、ド真ん中なんだけど〜!"」
みんな…騙されてるよ…。
僕は、1人泣きたくなった。
あの微笑みには、とんでもない裏があるのだ。
「じゃあ、三浦の席は…水嶋の隣だ」
「えぇ!」
僕は、思わず叫んでしまった。
「どうした、水嶋?」
「…なんでもないです」
僕は、くずれるようにしてイスに座った。
「ラッキ☆よろしく、廉」
「ねぇ、なんで水嶋の名前知ってるの?」
みんなが、疑わしそうに見てくる。
「あぁ、それはコイツの家に…」
僕は、慌てて三浦の口を塞ぐと
「家が近いから、あいさつに昨日来たんだ!」
「ふーん…?」
納得はしていないようだったが、なんとかごまかせたようだ。
「オイ、なんで、言っちゃダメなんだ?」
「僕が、いやだから」
「なんで?」
「いいから!」
「はいはい」
こうして、危険な学校生活が幕を開けたのだった…(泣





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